LGBTという言葉が新聞やテレビで取り上げられることが増え、「ブーム」のように感じる人も少なくありません。しかし、LGBTをはじめとしたセクシュアルマイノリティについて知り、理解することは決してブームで終わらせてはいけない…そんな想いから誕生した雑誌「Oriijin」。
今回は「Oriijin(オリイジン)」の編集長である、株式会社ダイヤモンド社のクロスメディア事業局の福島宏之さんにお話を伺いました。

「Oriijin(オリイジン)」とは

ダイヤモンド社が2017年3月に出版した雑誌。
「ココロ」と「多様性」の話を軸に、LGBT当事者・非当事者の双方にとって有効な情報をとりまとめ、多様な人物が“わたしのココロスタイル”と称して、自身の心の在り方を発していく。同時にダイバーシティを推進する企業や人事担当者に向けた、LGBTについての“A to Z”を併せ持つ。

「Oriijin(オリイジン)」出版のきっかけは何だったのでしょうか?

スタートは、「世の中にとって価値のある情報を、新しい雑誌で出版したい」という想いでした。
今はネットで検索すれば気軽に様々な情報を得られますが、便利な一方、ネットは情報量が多すぎて、見たり読んだりするのに疲れている人も多いのでは?と思います。
また、ネット「検索」では目的以外の情報はなかなか得られません。しかし、雑誌というメディアは、たまたま本屋で見かけたとか、他の特集を読んでいたら知らなかった情報も掲載されていた……など、偶然に得られる情報もあることに価値があります。
もともと、私は雑誌の編集者なので、雑誌への思いもことさら強かったです。

なぜLGBTをテーマにしたのでしょうか?

「Oriijin(オリイジン)」は、弊社の各部門を超えて、多様な有志メンバーでアイデアを出し合って創り上げた雑誌です。
「LGBT」については、自然発生的にメンバーから出たものですが、当初、私自身は消極的でした。

なぜLGBTをテーマにすることに消極的だったのですか?

誰を想定読者にし、情報発信するべきか…そこに、他のテーマにはない難しさを感じたからです。
当事者の方か、アライの方か、LGBTにまったく知見のない人たちか?
LGBTの当事者やアライの方々は、既に知識も見識もあるでしょうから、基礎的な情報を発信しても意味がなく、物足りないはずです。カルチャーやライフスタイルについても、ビジネス系出版社の弊社がはたして読者満足度の高い情報を発信できるのか?
「LGBT」をメインコンテンツにしたときに、誰にどういう情報を発信すべきかを、かなりの時間を割いて考え、迷い、メンバーで討議を重ねました。
「ダイバーシティやLGBTをテーマにすることにはたいへんな意味がある」という意思だけはブレませんでしたが…。

ご存じのように、2020年の東京オリンピックのエンブレムである組市松紋には「多様性と調和」というメッセージが込められています。
東京をはじめ、日本は2020年に向けて、社会がダイバーシティ推進へと動いています。しかし、LGBTという言葉自体を知らない人もまだ多いですし、理解促進に向けて、一出版社の私たちが雑誌メディアでやるべきことがあるのではないか?と、討議に熱が入りました。

もうひとつ言えば、弊社が渋谷区にあるということも、私の中では大きかったです。東京レインボープライドのパレードは、弊社前の明治通りがコースになっています。フェスタの会場である代々木公園と弊社の社屋は目と鼻の先です。同性パートナーシップ制度が導入されている渋谷区の出版社が、LGBTをテーマにした雑誌を創ることに価値があるのではないか、と。

ダイヤモンド社の本社はTOKYO RAINBOW PRIDEのパレードの沿道にある

TOKYO RAINBOW PRIDE 2017には「Oriijin(オリイジン)」としてブースを出展した

「Oriijin(オリイジン)」というタイトルやキャッチコピーである「暮らす&働く わたしのココロスタイル」はどのように決められたのでしょうか?

性自認や性的指向と、それぞれの人の心(ココロ)は密接な関係にあります。
LGBT当事者か非当事者かに関わらず、人は誰もが自分の性自認と性的指向を持っています。
自分の心(ココロ)にプライドを持ち、他者の心(ココロ)の在り方をリスペクトしていくこと……それが何よりも大切と考え、私たちは「ココロスタイル」というキーワードを掲げました。
雑誌のタイトル案は20ほどありましたが、メンバーの総意で最終的に「Orijiin(オリイジン)」に決定しました。その意味は編集後記にも書きましたが、誰にでも分かると思います。

実際に様々なフォントで作成したタイトル案と、新媒体を企画するにあたっての企画書

編集の際にこだわったのはどのようなところでしょうか?

LGBTの当事者、非当事者、NPO関係各位など、たくさんの方々にお話を伺い、アドバイスをいただきながら制作を進めました。
また、「雑誌」というアナログメディアならではの見せ方にもかなりこだわりました。たとえば、冒頭のタレントインタビューは2ページ構成ですが、見開き完結にせずに、片ページ起こし(=ページをめくって本文が表れる構成)にしています。
マウスでスクロールして情報を得るのではなく、指でページをめくって、紙の質感とともに情報を得ていただく……桜の季節に発売した雑誌なので、ある特集ではページ全体で桜を満開にさせています(笑)。

雑誌のテイストが明るくカラッとした雰囲気なのも心がけたことです。企画のテーマやデザイン、本文、写真、イラストの見せ方で、誰にでも手に取りやすいようにしました。
さらに、「誰にでも手に取りやすい」という創りとしては、井ノ原快彦さん・さだまさしさん・小林幸子さん・ヒロシさん・小島瑠璃子さんといった人気アーティスト・タレントの皆さまにもご登場いただき、「ココロスタイル」を語っていただきました。それは、LGBTに関心のない人たちにも、雑誌に触れていただきたいという考えがあってのことです。
実際、自分の好きなタレントが載っているから買ったという方から、「他のページを読んでLGBTのことが良く分かりました」という声をいただき、SNSでも拡散してくださいました。

明るい雰囲気の誌面

次回以降に取り上げてみたい特集などはありますか?

今回はトランスジェンダーの方があまり登場していないので、次回はきちんと情報発信させていただく予定です。私たちメディア側も「LGBT」と一口に括ってしまいますが、LGBT以外のセクシュアル・マイノリティの方も多くいらっしゃいますし、当然、L・G・B・Tの方々それぞれで、社会生活における悩みや考え方は異なります。
また、小誌は「インクルージョン&ダイバーシティ マガジン」ですので、LGBTをはじめとしたセクシュアル・マイノリティに限らず、多種多様な“ココロスタイル”で形成される社会について、然るべき情報を、正しく発信していくつもりです。
ダイバーシティを推進する企業・自治体・学校法人の情報なども、たくさんの方にお話をいただきながら、雑誌メディアという独自のスタイルでまとめていきたいと思います。

ありがとうございました!

編集部より
ダイヤモンド社といえば、週刊ダイヤモンドの出版や、「嫌われる勇気」といったビジネス書・経済書をはじめとした幅広いテーマの出版物を制作する会社さんです。
「Oriijin(オリイジン)」は、様々な角度からLGBTを特集しており、内容の堅さ柔らかさのバランスがちょうどよく、LGBT当事者もアライも、LGBTにそれ程詳しくない人にとってもおもしろく読めるのではないかと思います。そんなところがダイヤモンド社さんならではの雑誌だな、と感じました。
インタビューでは企画段階から出版まで、福島さんを中心に多くの方の熱い想いが詰まっていることを知れました。次回の「Oriijin(オリイジン)」発行もとっても楽しみです!